アレルギー

お子さまのアレルギーについて

アレルギーが増加傾向にある現在、お子さまのアレルギーに悩んでいるご家族も少なくありません。
私たちの体には免疫機能が備わっており、細菌やウイルス、寄生虫など体に害となるものが侵入すると抗体をつくって排除するようになっています。免疫機能は外敵に対して反応するもので、体に無害な物や大きな害を与えないものには通常反応しません。しかしアレルギーがあると、本来であれば問題にならない花粉やほこり、食べ物などにも過剰に反応して発疹や呼吸困難などのアレルギー症状を起こしてしまいます。
アレルギーにはさまざまなものがあり、年齢によって発症しやすい病気が異なります。乳幼児期にはアトピー性皮膚炎や食物アレルギーが多く、成長とともに気管支喘息、アトピー性鼻炎、花粉症などが増えていきます。
近年、これらのアレルギーが異なる時期に順々にあらわれる「アレルギー・マーチ」の増加が問題となっています。

気管支喘息

アレルギーなどによって気管支が慢性的に炎症し、呼吸の通り道である気道が狭くなる病気です。発作時に咳、痰、喘鳴(ヒューヒュー・ゼーゼーといった音が聞こえる)、息苦しさなどの症状が起こり、夜間や早朝にあらわれやすいのが特徴です。
喘息のお子さまは発作時以外でも気道に炎症が起きていることが多く、気道が敏感になっています。そのため、花粉やホコリなどの刺激が加わったり、ウイルスや細菌によって気道感染が起こったりすると、さらに気道が狭くなって喘息が増悪してしまいます。
また、喘息発作を繰り返していると、リモデリング(気道が狭くなって元の構造に戻らなくなる)を起こして難治性の喘息へと移行するおそれがあるため注意が必要です。
呼吸機能の低下を防ぐためには、発作の起きていないときから適切な治療を行って気道の炎症を抑え、リモデリングを予防することが大切です。

検査
気管支喘息は長期的な管理が必要になるため、気道の変化を早期発見したり治療の妥当性を評価したりするためにも呼吸機能の定期的な検査が重要になります。
呼吸機能検査では、専用の機器を用いて肺の容量や空気の流れ、空気を吸ったり吐いたりする能力や酸素を取り込む能力などを測定してデータをグラフ化します。気管支を拡げる薬を使用して肺活量を調べる検査を行うこともあります。
気道に炎症が起きていると呼気中の一酸化窒素濃度が高くなることが多いため、一酸化窒素濃度を測定して炎症の目安にしたり、パルスオキシメーターで酸素飽和濃度を調べて呼吸状態を確認したりする場合もあります。
また、初診時に血液検査によってアレルギー素因やアレルゲンを特定する検査や、他の呼吸器疾患の有無を確認するためにレントゲン検査を行うこともあります。
治療
発作が起こっているときには、狭くなった気管支を拡げる気管支拡張薬の吸入を行って呼吸を楽にします。発作が落ち着かないときには吸入を繰り返し行ったり、ステロイド薬の内服や点滴を行ったりすることもあります。また、症状が重い場合には入院が必要になることもあります。
喘息は発作時だけでなく、普段の治療も重要になります。まず、アレルギーの原因となるものを除去します。こまめに掃除をする、空気清浄機を使用する、ぬいぐるみや絨毯などを置かない、ペットの飼育を控えるなどして、アレルギーの原因となることの多いダニやほこりが溜まりにくい環境に整えるのが効果的です。
アレルゲンを回避するとともに薬物療法も行います。薬物療法では症状に合わせて、慢性的な気管支の炎症を抑えて増悪を防ぐ吸入ステロイド薬や、ロイコトリエン受容体拮抗薬などを使用します。従来の治療で改善がみられない場合には、特定の分子にだけ作用する分子標的治療薬を使用する場合もあります。
気管支喘息は慢性的な炎症を抑えて増悪を防ぐことが重要になるため、長期間にわたる治療が必要です。発作が起こらないからといって自己判断で治療を中断したりせず、定期的に受診して治療を継続することが大切です。

食物アレルギー

本来無害であるはずの食べ物に免疫機能が過剰に反応し、蕁麻疹やかゆみ、咳や息苦しさなどがあらわれる病気です。血圧の低下や意識障害など重篤な症状を起こし、命を脅かすアナフィラキシーショックを起こすこともあります。
食物アレルギーの多くはIgE抗体が原因となって起こるものですが、中にはIgE抗体が関与しない食物蛋白誘発胃腸症の場合もあります。
原因となる食べ物は人によって異なりますが、年齢によって食物アレルギーを起こしやすい食べ物があります。乳幼児期は卵や牛乳、小麦が原因となることが多く、魚類や魚卵が原因となることもあるため注意が必要です。学童期以降ではエビ、カニ、魚類、ピーナッツ、蕎麦、果物などが原因の食物アレルギーがよくみられます。
原因となる食べ物の成分が皮膚から入り湿疹となってあらわれることもあるため、アレルゲンに不用意に触れないことも大切です。
乳児期は腸管の発育が未熟なため、食物アレルギーを起こしやすいといわれています。しかし、消化管などの発育とともに症状が少しずつ改善し、問題なく食べられるようになることも少なくありません。

検査
IgE抗体の値を調べる血液検査や、皮膚にアレルゲン液を置いてその上を針で刺し、皮膚の反応をみる皮膚プリックテストなどを行います。しかし、これらの検査だけでは診断を確定できないため、アレルゲンが疑われる食べ物に対して食物経口負荷試験を行います。当院では、血液検査をスクリーニングで行い、強いアレルギーを疑う場合は、安全面を考慮して、三重病院アレルギー科に検査等を依頼しています。
食物経口負荷試験では実際にその食べ物を食べ、あらわれる症状などをみて診断します。検査によってアナフィラキシーなどのアレルギー反応があらわれるおそれがあるため、医療スタッフが様子を確認しながら慎重に検査を進めます。
食物経口負荷試験はもっとも確実性が高いといわれており、食べ物を除去するか判断するための重要な検査です。また、年齢とともに食物アレルギーが起こらなくなり、安心して食べられるようになったことを確認する際にも食物経口負荷試験が役立ちます。
治療
食物アレルギーがある場合には、アレルギー反応を起こさないように注意しなくてはなりません。食物経口負荷試験などをもとに、どの食べ物をどれだけ除去するのかなどを指導します。食べ物を除去する場合にはできるだけ最小限の制限に留め、栄養や食生活に支障が生じないようにすることが大切です。他の食べ物で栄養を補うなど、栄養が不足しないように食事内容を考慮します。また、経過を観察するとともに食物経口負荷試験を行い、可能であれば除去を解除して食べられる食べ物を増やしていくことも大切です。
食物アレルギーの食事療法にはご家族はもちろん、保育園や幼稚園、学校等の協力が欠かせません。ご家族や医療機関、学校等が連携し、お子さまが安全に安心して食事できるようにします。

アレルギー性鼻炎

吸い込まれたアレルゲン(アレルギー性鼻炎を起こす原因物質)が、鼻の粘膜から体内に入ってアレルギー反応を起こす病気です。季節を問わず1年中症状のあらわれる通年性アレルギー性鼻炎と、特定の季節にのみ症状があらわれる季節性アレルギー性鼻炎があります。通年性アレルギー性鼻炎はハウスダストやペットの毛などがアレルゲンとなることが多く、季節性アレルギー性鼻炎のアレルゲンはスギやヒノキ、ブタクサやヨモギなどの花粉が多くなっています。
主な症状にはくしゃみや鼻づまり、さらさらした透明の鼻水などがあり、小児は鼻血を伴ったり副鼻腔炎を合併したりすることがあります。また、気管支喘息と合併することが多く、その場合は気管支喘息の悪化を招きやすいため注意が必要です。

検査
鼻水を綿棒で採取し、好酸球の有無を顕微鏡で確認します。好酸球はアレルギー反応によって増加するため、鼻水に好酸球がみられる場合にはアレルギー性鼻炎である確率が高くなります。また、アレルゲンを特定するために血液検査で特異的IgE抗体の種類を調べることもあります。
治療
アレルゲンを吸い込まないようにすることが第一です。空気清浄機を使用する、こまめに掃除をする、寝具をしっかり乾燥させる、フローリングなどホコリが溜まりにくい床にする、室内でペットを飼うのを控えるなどしてアレルゲンを減らしましょう。花粉が多い時期に外出する時にはマスクや眼鏡を使用する、帰宅時に花粉をしっかり払ってから家に入るなど、花粉との接触を避け室内に持ち込まないようにすることが大切です。
アレルゲンの回避とともに、抗アレルギー薬による薬物療法を行います。シロップ、ドライシロップ、チュアブルなどの形態があるため、粉薬や錠剤が苦手なお子さまでも飲みやすくなっています。
花粉症など季節性アレルギー性鼻炎の場合には、原因となる花粉が飛来する少し前から服用を開始することで症状を和らげることができます。

アトピー性皮膚炎

かゆみを伴う湿疹が繰り返しあらわれ、良くなったり悪くなったりを繰り返す病気です。湿疹が左右対称にあらわれることが多く、年齢によって症状のあらわれ方が異なります。
また、肌のバリア機能が低下しているお子さまや、アトピー性素因をもっているお子さまに多くみられるという特徴もあります。
アトピー性皮膚炎のお子さまの多くは皮膚の皮脂膜が減少して角質が粗くなり、保湿力が低下するため肌が乾燥しています。そのため肌のバリア機能が低下してしまい、アレルゲンなどの刺激を受けやすくなることが要因となっています。

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舌下免疫療法とは

アレルギーを根本から治療できる治療法です。アレルギーの原因物質が極少量含まれた錠剤を、1分ほど舌の下に置いてから飲み込みます。アレルゲンを少しずつ体内に取り入れることで、アレルゲンを徐々に体に慣らしてアレルギー反応が起こるのを抑えます。
5歳以上になると治療を受けることができ、現在はスギ花粉とダニアレルギーの治療が可能です。
当院でも行っておりますので、根本的に治療したい方やご興味のある方はお気軽にご相談ください。

舌下免疫療法